カテゴリーザ・コンテンポラリー, 番組情報
新番組『ザ・コンテンポラリー』の第13回、お楽しみいいただけたでしょうか。今回のテーマは<パリ万博 1889年曲>でした。今年2025年に開催となっている<EXPO2025 大阪・関西万博>が終盤を迎えていることと、その閉幕間際の10月7日から9日にかけての三日間に万博会場内で開催予定の【木の文化の音楽祭】(主催:(一社)日本木文化学会/国際木文化学会/ワールド・ウッド・デー2025実行委員会)に寄せて、このテーマを設定しました。
1889年頃(18世紀終盤)のヨーロッパ社会は、主要国に産業革命による工業力の急速な発展とそれによる経済の発展が概ね行き渡り、文化も爛熟期をも変えようとしていた時代でした。1889年にパリで開催された万国博覧会は、正にその時代を象徴するビッグイベントでした。あの有名なエッフェル塔はその万博のシンボルとして建設されたもので、石積みの建築の時代から鉄骨の建築の時代への転換を象徴する前衛的な存在となりました。
それから約80年の後、1970年に大阪で開催された<EXPO’70 大阪万博>は、第二次世界大戦からの世界の復興と前衛芸術の急進の頂点に日本の経済発展が重なり、人類全体の戦後史の転換期を象徴する万博であったと私は感じています。歴史的にとても重要な万博であったと私は考えています。
参考資料:<EXPO’70 OSAKA>3Dでよみがえる大阪万博(朝日新聞)
https://www.asahi.com/special/expo70/
そして現在開催中の<EXPO2025 大阪・関西万博>は、混迷する国際情勢や地球温暖化などの問題に直面している中で持続可能な未来を考えざるを得ない状況となっている中で、木材の積極的な活用をはじめとして木や植物への注目度が増している、21世紀前半の重要な転換期に位置する万博という様相を呈しています。その万博会場内で開催する【木の文化の音楽祭】にご注目いただければ嬉しく思います。
参考資料:松尾祐孝ブログ
WWD2025【木の文化の音楽祭】初日10/7プログラム発表(EXPO2025会場内開催)
WWD2025【木の文化の音楽祭】中日10/8プログラム発表(EXPO2025会場内開催)
WWD2025【木の文化の音楽祭】楽日10/9プログラム発表(EXPO2025会場内開催)
さて、番組内でお聴きいただいた楽曲のリストを記しておきましょう。
M1 クロード・ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲 (1894 年初演)
M2 ジュール・マスネ/「タイスの瞑想曲」〜オペラ「タイス」より〜(1894 年初演)
M3 ガブリエル・フォーレ/「レクイエム」ニ短調 作品 48 より
第4曲:ピエ・イェズ 第5曲:アニュス・デイ(決定稿 1900 年初演)
M4 カミーユ・サン=サーンス/交響曲第3番 より 第1楽章 第2部(1886 年初演)
M5 セザール・フランク/交響曲 ニ短調 より 第3楽章 (1888 年初演)
この”花の都パリ”の爛熟期は1913年頃まで続きます。その最後の数年は、ロシアバレエ団のパリでの活躍が始まった時期でした。1910年:ストラヴィンスキー「火の鳥」初演、1911年:ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」初演、1912年:ラヴェル「ダフニスとクロエ」初演、1913年:ストラヴィンスキー「春の祭典」初演/ドビュッシー「遊戯」初演、と並ぶ傑作群は実に壮観です。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発して、ヨーロッパ社会は混迷期に入ってしまうのでした。
音楽史は世界史と照らし合わせてこそ面白く興味深く理解できます。20世紀初頭の話題は、いずれこの番組でテーマとして取り上げて深掘りしていきたいと思っています。
では来週もまた金曜日の18:00〜19:00にお会いしましょう。次回と次々回は、21世紀開幕の年=2001年に私が関わった企画を振り返る特集を予定しています。どうぞお楽しみに!