カテゴリー上方クラシック倶楽部, 番組情報
クラシック音楽においては東京以上の歴史と伝統を持ち、時代を代表する音楽家、作曲家を
数多く輩出、音響/設備の良いホールや瀟洒なサロンが点在する関西の音楽界。
しかし、昨今のメディアの東京偏重の弊害で、その魅力、情報が全国に
伝わりにくいのが現状です。そこに一石を投じ、関西の音楽シーンの「推し」を
国内外に広く紹介するレギュラープログラムが「上方クラシック俱楽部」。
関西のクラシック界の新しい情報、おすすめの音楽家や演奏会、コンサート・ホールや サロンを、
ゲストも交えながら、毎月1回のペースでお届けします。
プレゼンターの崎本哲生さんはクラブ関西の専務理事にして、アマチュアオーケストラで
コンサートマスターを歴任したヴァイオリン奏者、音楽愛好家。
8月のゲストは、大阪中之島美術館の館長 菅谷富夫さんです。
2022年開館の新しい美術館「大阪中之島美術館」では
ミニコンサートなども積極的に開催され
”美術と音楽が交差する空間”として人気の美術館です。
今回は1870年代にモネの一枚の絵に端を発し
音楽界も巻き込んで大きな潮流となった「印象主義」のお話を中心に
たっぷりと伺うことが出来ました。
お楽しみください。
《楽曲》
1、ドビュッシー:交響詩「海」~Ⅱ.波の戯れ
2,フォーレ:シチリアーナ Op.78
3,サティ:ジムノペディ第3番
4,ドビュッシー:ベルガマスク組曲~Ⅰ.前奏曲(ハープ版)
5,サン=サーンス:クラリネット・ソナタ~第2楽章
《ゲストプロフィール》
菅谷富夫 (Tomio Sugaya) 大阪中之島美術館 館長
1958年生まれ。明治大学大学院文学科博士課程前期修了。
編集者を経て1990年滋賀県陶芸の森学芸員。1990年より大阪市立近代美術館建設準備室学芸員。
2019年12月より大阪中之島美術館館長。同館は2022年2月に開館し、現在に至る。
準備室勤務当時より、同美術館の計画づくり、コレクション形成に関わるとともに
コレクション展、企画展等も行う。
またその一方で、近代デザイン、写真、現代美術の分野で評論活動も行う。
《プレゼンター・プロフィール》
崎本哲生(Tetsuo Sakimoto) 音楽愛好家
1956年、大阪府生まれの倉敷育ち。
ヴァイオリンを始めたのが3歳、挫折したのが6歳。再び目覚めたのが13歳。
その後、同志社交響楽団、宝塚市交響楽団などのコンサートマスターを歴任。
2011年より現在までヴァイオリンを馬渕清香氏に師事。
2018年京阪ホールディングス株式会社を定年退職。
2016年~2023年まで東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員。
2024年6月、「クリエイティブジャパン戦略」(白桃書房)を共著で出版。
その中で「アートは未来創造のキーワードとなるか」をテーマとした論考を寄稿。
現在、一般社団法人クラブ関西専務理事。
《プレゼンターからのメッセージ》
最近、ふと考えたんです。
「感心する演奏」と「感動する演奏」って、何が違うんだろう?って。
どちらも素晴らしい体験だけど、感心は“頭”で理解すること。しかし、感動はもっと深いところ――
潜在意識にふれる何かがあるような気がします。
この頃ハマっているのが、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番の第1楽章。
あの旋律に身をゆだねていると、まるで大草原に抱かれているような、
すべてが許されるような感覚になります。
うまく言葉にできないけれど、心の奥から何かがふわっと湧いてくる。
ああ、これが“感動”なのかも…って思うんです。
音楽って不思議ですね。
同じ風景を見ても、どんな音楽を聴いているかで、感じ方がまるで変わってくる。
つまり音楽は、私たちの潜在意識にある「フィルター」をすっとすり替えてくれるものなのかな?と。
たとえばエルガーの《威風堂々》を聴けば、心がしゃんとして、少し勇気が湧いてくる。
逆にラフマニノフの《ヴォカリーズ》を聴くと、胸の奥からやさしさや切なさが
静かに立ち上ってくる…。
こうした音楽体験を、丁寧に言葉にしてみると、ただの「感想」じゃなくなるんですよね。
感想が感想を呼び、誰かの心にふっと灯りをともすような、
そんな小さなつながりが生まれることもあるのではないかと。
音楽と言葉。
どちらも、目には見えないけれど、心の風景を分かち合うための大切な手段なんだな、
と改めて感じています。
そしてきっと、本当に大切なことは、いつも“言葉を超えたところ”にある
――そんな気がしています。