カテゴリー上方クラシック倶楽部, 番組情報
クラシック音楽においては東京以上の歴史と伝統を持ち、時代を代表する音楽家、作曲家を
数多く輩出、音響/設備の良いホールや瀟洒なサロンが点在する関西の音楽界。
しかし昨今のメディアの東京偏重の弊害で、その魅力、情報が全国に
伝わりにくいのが現状です。そこに一石を投じ、関西の音楽シーンの「推し」を
国内外に広く紹介するレギュラープログラムが「上方クラシック俱楽部」。
関西のクラシック界の新しい情報、おすすめの音楽家や演奏会、コンサート・ホールや サロンを、
ゲストも交えながら、毎月1回のペースでお届けします。
プレゼンターの崎本哲生さんはクラブ関西の専務理事にして、アマチュアオーケストラで
コンサートマスターを歴任したヴァイオリン奏者、音楽愛好家。
7月のゲストは、サクソフォーン奏者の立川正美さんです。
ソリストとして、関西を拠点に活躍する立川さんは、
一方で、ホスピスや子ども食堂への出前ライブ、
ディサービスや介護施設への慰問演奏、
さらには被災地での復興チャリティコンサートなどを展開する
非営利団体「Chest(チェスト)」を立ち上げた方です。
アマチュア演奏家に表現の場を提供する弾き合い会「MASAMIの会」も
精力的に続ける立川さんに「これまで」と「これから」を
じっくりと伺いました。
お楽しみに!
《楽曲》
1,ドヴォルザーク:歌劇「ルサルカ」より「月に寄せる歌」
2,石川亮太:四季のファンタジア(立川正美 委嘱作品)
3,佐藤信人:四つの物語 第二曲「夏の草原」(立川正美 委嘱作品)
立川正美(サクソフォーン)、阿部桂永子(ピアノ)
《ゲストプロフィール》
立川正美 (Masami Tatekawa) Saxophone
大阪音楽大学音楽学部器楽学科管楽器専攻卒業。
第11回宝塚ベガ新人演奏会にて優秀賞を受賞。神戸新人音楽賞コンクールにて最優秀賞を受賞。
第3回いかるが音楽コンクール 音大生・音大卒業生 管楽器部門 第3位受賞。
第66回TIAA全日本クラシック音楽コンサートに選抜メンバーとして出演し奨励賞を受賞。
第17回大阪国際音楽コンクール木管楽器部門入賞。ブルガリアにてソフィア フィル ハーモニーと共演。
2017年ザ・シンフォニーホールのニューイヤーコンサートにてオーケストラと共演。
これまでにサクソフォンを石田智子、篠原康浩、赤松二郎、小村由美子、田端直美の各氏に師事。
ジャズを入江美香氏に師事。
《プレゼンター・プロフィール》
崎本哲生(Tetsuo Sakimoto) 音楽愛好家
1956年、大阪府生まれの倉敷育ち。
ヴァイオリンを始めたのが3歳、挫折したのが6歳。再び目覚めたのが13歳。
その後、同志社交響楽団、宝塚市交響楽団などのコンサートマスターを歴任。
2011年より現在までヴァイオリンを馬渕清香氏に師事。
2018年京阪ホールディングス株式会社を定年退職。
2016年~2023年まで東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員。
2024年6月、「クリエイティブジャパン戦略」(白桃書房)を共著で出版。
その中で「アートは未来創造のキーワードとなるか」をテーマとした論考を寄稿。
現在、一般社団法人クラブ関西専務理事。
《プレゼンターからのメッセージ》
最近、ふと考えたんです。
「感心する演奏」と「感動する演奏」って、何が違うんだろう?って。
どちらも素晴らしい体験だけど、感心は“頭”で理解すること。しかし、感動はもっと深いところ――
潜在意識にふれる何かがあるような気がします。
この頃ハマっているのが、ボロディンの弦楽四重奏曲第2番の第1楽章。
あの旋律に身をゆだねていると、まるで大草原に抱かれているような、
すべてが許されるような感覚になります。
うまく言葉にできないけれど、心の奥から何かがふわっと湧いてくる。
ああ、これが“感動”なのかも…って思うんです。
音楽って不思議ですね。
同じ風景を見ても、どんな音楽を聴いているかで、感じ方がまるで変わってくる。
つまり音楽は、私たちの潜在意識にある「フィルター」をすっとすり替えてくれるものなのかな?と。
たとえばエルガーの《威風堂々》を聴けば、心がしゃんとして、少し勇気が湧いてくる。
逆にラフマニノフの《ヴォカリーズ》を聴くと、胸の奥からやさしさや切なさが
静かに立ち上ってくる…。
こうした音楽体験を、丁寧に言葉にしてみると、ただの「感想」じゃなくなるんですよね。
感想が感想を呼び、誰かの心にふっと灯りをともすような、
そんな小さなつながりが生まれることもあるのではないかと。
音楽と言葉。
どちらも、目には見えないけれど、心の風景を分かち合うための大切な手段なんだな、
と改めて感じています。
そしてきっと、本当に大切なことは、いつも“言葉を超えたところ”にある
――そんな気がしています。